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2010年度研究内容

酸化ストレスと動脈硬化症−老年医学の立場から−

研究者
林 登志雄名古屋大学医学部 老年科学

キーワード加齢、一酸化窒素、血清脂質、糖尿病、細胞老化

要旨

後期以降の高齢者では動脈硬化性疾患が死因及び介護要因として大きな影響を持つ。高齢者に認 める進行動脈硬化症には高脂血症等の普遍的な冠危険因子に加え加齢と性(閉経)という特有の因子が関与する。細胞レベルで動脈硬化発症進展機序を検討すると、各冠危険因子とともにNO分泌能低下と活性酸素増加を認め、高齢者動脈硬化症には細胞老化の寄与が報告されている。これらの病変や、老化には各々酸化ストレスが関与することが報告されている。上記を踏まえ、我々はNOと活性酸素の細胞レベルでのクロストークを介した老化制御、動脈硬化進展予防の可能性を検討してきた。一連の検討より、老化は動脈硬化発症進展の病態生理に関与する事が理解されてきた。一酸化窒素(NO)の生物学的利用能は、特に内皮機能を代表するものとして老化により制限される。同時に、NOの老化そのものに対する効果や高脂血症や糖尿病等の動脈硬化危険因子とNO及び老化の間での相互作用も徐々に明らかになってきた。高グルコースにより内皮細胞老化が促進されること、インスリンは濃度により内皮細胞老化への作用が異なる可能性が示唆され、ヒト個体の老化、血管病変と糖代謝、インスリン作用を考えると、興味深い。NOによる活性酸素制御を介する内皮細胞老化制御は臨床的に高齢者の動脈硬化治療に役立つ可能性も推測されうる。 エストロゲンの抗老化作用とNO、L-arginine、L-citrullineや抗酸化剤とeNOSの抗老化作用高齢者の動脈硬化治療との関連も示唆され、今後の発展が期待される領域と考えている。

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