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2012年度研究内容

腎不全における低酸素と酸化ストレス

研究者
南学 正臣東京大学医学部附属病院 腎臓内分泌内科

キーワード低酸素 酸化ストレス CKD HIF

要旨

循環器疾患、脳卒中など、様々な生活習慣病では虚血による低酸素が病態の中心であり、慢性腎臓病CKDの進行のfinal common pathwayとしても腎臓の慢性低酸素状態が重要な役割を果たしている。
酸化ストレスは酸素が過剰な状態において活性酸素が産生されることで惹起されるが、低酸素もそれ自体が酸化ストレスを引き起こす。酸素不足では、細胞がATP欠乏に陥るのみならず、酸化ストレスも亢進し、様々な細胞傷害が起こる。酸化ストレスは血管内皮細胞障害を引き起こすとともに、ミトコンドリア呼吸の脱抑制を引き起こし、細胞の酸素消費効率を下げる。更に、慢性低酸素状態は一部の抗酸化酵素の発現を低下させることにより酸化ストレスを増悪させる。このように、低酸素傷害と酸化ストレスは悪循環を形成し、病態に寄与する。また、酸化ストレスは、老化の過程においても重要な役割を果たすことが知られている。
一方、生体は低酸素に対する防御機構として、転写調節因子hypoxia inducible factor(HIF)を備えており、HIFの活性化は赤血球を増やすEPO、血管新生を促すVEGF、嫌気的解糖に携わる酵素などを誘導する。HIFはPHDによる水酸化と、その結果起こるvon Hippel Lindau蛋白によるHIFの認識・分化による制御を受けている。最近の研究で、EPO産生はHIFの3つのisoformのうちHIF-2により調節され、HIF活性化化合物による腎性貧血の治療が可能であること、尿毒症状態がHIFの活性化抑制を通して腎性貧血の重要な要因になっていることが判明した。
同様に、生体は酸化ストレスに対する防御機構として転写調節因子Nrf2を備えており、Nrf2はKeap1による制御を受けている。Nrf2の活性化化合物も腎臓病の治療に有効であることが示されている。これら生体が本来備えている防御機構を利用した治療方法の確立が、期待されている。

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